中国語の学習者が手に取り参考にする書籍は、たくさん売られていますね。
発音に特化した本で現在手に入るものだけでも10冊は下らず、新しい本もどんどん出ます。
東方書店に勤めていたときは、さすが中国関連書籍専門書店だけあって、たくさんの書籍に触れる毎日でした。
中国語講師をしばらく経験してから入社したので、たくさんの教科書・独学書を見比べるのは、それはそれは楽しいものでした。
あまり流通しないようなテキストも含め、これは良書だ!と思った本はすかさず購入するクセがつき、一時期は学習書コレクターさながら。自宅の本棚の占有率がとんでもないことになっていました。
引越しをしたり家族が増えたりで、今では極力本を買わないようにしています。
が、発音に関する書籍は別ですね。
受講生さんがたいていは何らかの学習書をお持ちなので、
「ではその本の○ページのトレーニングをしておいてください」とか、
「ではその本の付録の文章で音読練習をしましょう」と、レッスンに利用することもあります。
わたしが大好きな単語帳作成の作業でも、そうした書籍から単語を抽出するので、たいへんお世話になっています。
もちろんただ写すだけではなくて、選択と組み合わせに鬼のカスタマイズが入りますよ。
でも、実は説明の本文はあまり読んでいません。
発音のしかただったり、発音の説明のしかただったりを勉強しようと思って手に取ることはないんですね。
ゼロから教える方にはこう、発音矯正をしたい方にはこう、という説明の順番がわたしのメソッドとして確立しているので、あちこちの本からつまみ食いをしても、うまくあてはまらないのです。
意外なことに、発音矯正の受講者さんが何らかのポイントでつまづいているとき、その原因を探るのに役立つことはあります。
力まなくていい動作で力んでしまったり、どういうわけか口の形が大きくずれてしまったり、そんなときに、発音の本を何冊もひっくり返してみます。
受講者さんから「○○先生の本にこう書かれているんですが、どういうことですか?」と尋ねられてその理由を考えたりもします。
すると、ある指示が不必要なまでに学習者さんの意識に残って、それが自然な発音を妨げていることが分かったりします。
こうしてみると発音の学習書はわたしにとって辞書みたいなもののようです。
文字素材の詰まった宝箱であり、音声素材の詰まった宝箱であり、教え方の事例の詰まった宝箱であり、そこに置いてありさえすれば、困ったときにページを繰って答えを見つけることができる。
「説明のしかたをつまみ食いをしても、うまく当てはまらない」ということは、例えば、語学スクールの発音特別講習なんかに参加したときに、なんだかしっくりこない、というようなケースと同じです。
たぶん。
今度、そのことも記事にしてみますね。
(書きました↓)
よく考えてみたら、発音の学習書だけじゃなくて文法の学習書なんかも、わたしにとっては辞書だなあ、と思ったので、今度は「講師は文法書とどう付き合っているか」なんて記事も書いてみようと思います。