『翻訳通信』第32号 2004年1月号
「新世代の翻訳家に期待」(山岡洋一)より
餅は餅屋なのか
ハードルを上げる
「学者や専門家の間で、翻訳に本気になって取り組む姿勢が薄れたとしても不思議ではない。そうなれば、本気で翻訳に取り組む専業翻訳者にいつか、翻訳の質の点で追い抜かれる」
外国の優れた知識や文化を伝える仕事を誰が担うのか
「出版翻訳の世界では気づかない間にハードルが上がり、それを越えられない学者や専門家はかなりの分野で、翻訳から撤退したのだ」
「日本がとくに遅れている状況ではなくなったとしても、世界全体の優れた知識や文化のうち圧倒的な部分が外国語によるものだという事実に変わりはない。翻訳が重要であることに変わりはない。」
「では、大切な翻訳を誰が担うのか。学者や専門家が事実上この仕事から降りたいま、専業の翻訳者しかいないのはたしかな事実だろう」
ハードルをもう一段上げよう
「現状には不満を感じる。「読みやすい」という名の幼稚な翻訳が少なくないし、英文和訳調から充分に脱却できていない翻訳が多い」
「外国の優れた知識を母語で学べるようにし、外国の優れた娯楽を母語で楽しめるようにするのが翻訳である」
「翻訳の本来の役割を考えれば、「読みやすい」翻訳から一歩飛躍して優れた日本語で訳すことが大切だ」
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研究者も翻訳家もどちらも目指したことのある私にとって興味深い論。
翻訳とはずっと縁のある生活をしているけれど、「「読みやすい」という名の幼稚な翻訳」なんていう指摘は肝に銘じておこう。
「外国の優れた娯楽を母語で楽しめるようにする」ことを目指したいなあ。