すてきな電子書籍をご紹介します。
翻訳という営みを、大切に大切に包み込むように見つめ、その繊細なまなざしが一冊にまとめられています。
【目次】
第1章 私にとっての翻訳 ①趣味としての翻訳
第2章 私にとっての翻訳 ②仕事としての翻訳
第3章 正しく原文を理解する
第4章 岡本先生の翻訳講座・実況中継
第5章 『露の世に』中日対訳
ご紹介がこんなに遅くなってしまったけれど、出た当日にさっそく購入して読破していました。
翻訳修行中のわたしですから、翻訳に関する本はこれまでかなり読んできました。
でも、この『露の世に』のスタンスで書かれた類書は、一冊もありません。
とてもユニークで、読みどころの多い本です。
第2章は、著者のMarieさんご自身の経験を通じ、翻訳業界で発生するさまざまな業務を紹介しています。
第3章は、記号の使い方など基礎的な知識と、構文読解のためのトレーニング、スラッシュリーディングの実例が載っています。そして音読の大切さも。
第4章はのどから手が出るほど欲しかった翻訳指導の実例が読めます。講師は気鋭の岡本悠馬先生。
Marieさんのネームバリューもすごいけれど、岡本さんのネームバリューもすごい。
ゴールデンコンビです。
どの章も、簡にして要。翻訳の世界ってどんなところ?と思っている方に迷わずお勧めします。
◆
上記のいずれも読み応え十分なのですが、私にとって一番「これだ!」と衝撃があったのは、
第1章 私にとっての翻訳 ①趣味としての翻訳
でした。
わたしが中国語翻訳を学習していたのは、職業選択を考える時期でしたので、実務翻訳・産業翻訳で収入を得ることが直近の目標でした。
でもわたしは、翻訳をすること自体が楽しい。お金が発生しなくても翻訳をしていたい。
その気持ちに名前があることに、この本で気づかせてもらいました。
翻訳は、「趣味としてもとてもすばらしいもの」。
……そうか、わたしは翻訳を趣味としてたのしんでもいいんだ。
そして、Marieさんは翻訳をたのしんでいらっしゃるんだな。
その気づきが、この本を読んで一番の収穫でした。
第5章は、Marieさんの世界観にぴったりの美しい中国語エッセイの、Marieさんご自身による翻訳。
このエッセイはMarieさんのお友達の中国人OL、ミシェルさんのブログに掲載されたもの。
感受性豊かな女性の筆になる作品それ自体が美しく、これを翻訳勉強会の素材として選んだMarieさんのセンスには、かねてから脱帽していました。
Marieさんがさまざまな歩みを経られて今の心持ちにいたったこと。
そしてそのお気持ちのうえで原書読書会や中国語翻訳勉強会を開催されていること。
そうしたことがストンと心に入ってきました。
◆
レイアウトや装丁も丁寧に気を配られていることが分かる、上質なKindle本です。
粗製乱造の電子書籍に辟易している方も、この本なら安心ですよ。
Marieさんがこれ以前に出されているKindle本も、どれも丁寧に作りこまれていて、すてきです。
電子書籍のお手本にさせていただきたい!と思っています。
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Marieさんのamazon著者ページ
こちらは、言わずと知れたMarieさんの充実のブログ。
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「Mandarin Note」