レッスンで、音読の仕上げのモデルとして、文を1行音読しました。
最終的にはこういう音読を目指す、という例を出したのです。
すると受講生さんが「うまいなあー」と感心してくれました。
うまく聞こえる音読というのにはコツがあります。
こうやったら自然に聞こえる、うまく聞こえる、という操作をしているからうまく聞こえるのです。
今回は、そういったコツについてお話しします。
目次
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- わたしのレベル
- 声をつなげる
- 緩急抑揚を表現する
- やっているうちに発声がよくなる
わたしのレベル
わたしは受講生さんのモデルになるような発音を心がけています。
まあそれは発音講師をしていますので、当然の努力ではあります。
長文の音読も練習しています。
レッスンで長文音読に取り組んでいる受講生さんもいますし、音読サークルを主宰しているので、まあこれも同然の努力ではあります。
ですが、一つ一つの発音がよいとしても、音読の方は「还不到理想,差得远(理想のレベルにはほど遠い)」、よくいえば伸び代があるレベルだと自覚しています。
(だって昨今の日本語ネイティブさんの音読のレベル向上ときたらすごいんですもの。)
とはいえ、わたしの音読もまったくお話にならないというわけではなく、月一回でチェックしていただいているネイティブの先生にはOKと言ってもらっています。
そういう、発展途上ではあるけれどもそこそこ見られる音読者のわたしが、レッスンでお伝えしている内容だ、という前提でお読みいただければと思います。
声をつなげる
コツの一つは、1フレーズ、あるいは1文のあいだは声をつなげておくということです。
発音の並びによって特に必要があれば、いったん声門閉鎖(声帯から声を出すのをやめる)することもあります。
でももし特段の理由がなければずーっと声は出しっぱなしです。
声がずーっと出ているなかで、子音を出したり母音の構えを変えたりして、いろいろな発音を表現するわけです。
これをやらないとどうなるか。
声をつなげることを意識していないと、多くの人は漢字1文字分の発音、つまり1音節の発音ごとに少し休んでしまうことがあります。
1文字ずつの粒々(つぶつぶ)読みになってしまうわけです。
原稿を読んでいると、特にそうなりやすいですね。
聞き手は、原稿なしで音声を聞いて意味を受け取るのですから、1文字1文字の発音では意味のまとまりが感じられず、または意味の切れ目がわからず、内容を理解するのに苦労してしまいます。
その点、1フレーズ、あるいは1文のあいだは声をつなげるという発音をすると、意味のまとまりが感じられ、語り手の気持ちが伝わる中国語になります。
緩急抑揚を表現する
コツの二つ目は、緩急抑揚を表現するということです。
文の中には、目立たせたいポイントというものがあります。
主題や、データや、聞き手に馴染みがないであろう固有名詞など、何らかの意図をもっていずれかの語を目立たせる話し方になるのが自然です。
母語を話すときは誰もがそうしているはずです。
これを、外国語でもできるようになったらいいですよね。
中国語では、一般的な平叙文なら目立たせる語を
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- ゆっくり発音する
- 前後に少し間を空ける
- 声調の高低の幅を広くする
といった工夫で目立たせます。
伸び縮みする長さ
目立たせたい語はゆっくり発音され、逆に目立たせる必要のない語は、さらーっと速く発音されます。
おもに、文法的な機能だけを持っている虚詞が、さらーっと読み飛ばされます。
時間詞、副詞、否定詞、能願動詞、方位詞、助詞、接続詞などですね。
伝えたい意味によっては、こうした虚詞を故意に目立たせることもあります。
虚詞ではないものは何かというと、実詞といい、名詞、動詞、形容詞です。
一般的な文では、実詞を目立たせるのが普通です。
※ 感情の乗ったセリフなどでは、激昂するに任せて一文すべてが速く発音されるということもあります。
広がる幅
目立たせたい語では、声調の最も高いところから最も低いところまでの幅が広がります。
高い音はもっと高く、低い音はもっと低くなるわけです。
ですから、一文の中で、同じ第1声が出てきたとしても、片方が地の文、片方が目立たせる語だとしたら、第1声の高さがかなり違う、ということが起こります。
低い方、第3声の高さにも同じことが起こります。
緩急抑揚の前提
教科書で初めて見る文を読むような、長さ・高さの揃った発音は、整ってはいますが、意味のまとまりを聞かせる段になるとパフォーマンス不足になってしまいます。
とはいえ、長さ・高さの揃った音読ができなければ、変幻自在な長さの伸び縮みも発音できませんので、まずは整った音読の練習をするのが正解です。
そして、整った発音ができるようになったら、仕上げとして、もう一度お手本の音声をきき、緩急抑揚もコピーしてみましょう。
※ 初級教材では、故意に緩急抑揚のないモデル音声が用意されていることもあります。
そうしたテクニックを使っていれば、音読はどんどん、聞き取りやすく自然になっていきます。
やっているうちに発声がよくなる
もうひとつ、発音とは異なる要素として、発声のことがあります。
練習を続けているうちに、声を出すのに慣れて、発声がよくなってくるという副産物がついてくるんです。
声が小さかった人、高さ低さをコントロールしにくかった人、音を長く伸ばしにくかった人、そんなふうに苦手項目があった人でも、続けていくうちにどんどん上手になります。
なにをかくそう、わたしも、数年前はもっと幼稚な発声でした。
今の発声に落ち着くまでは、高めの声、低めの声、張った声、リラックスした声、といろいろ試してみましたし、今でもシチュエーションによって声の出し方を変えてみています。
発声の問題は発音の問題とは違いますが、これも「うまい!」と言われる要素の一つではありますので、継続的に練習して技術を磨いて損はありません。
まとめ
まとめます。
音読が上手な人というのは、天性の才能によって上手なわけではありません。
音読が上手に聞こえるポイント、中国語が自然に聞こえるポイントというのを知っていて、そう聞こえるようにコントロールをしているのです。
もちろん中には、意識してそうした操作をせず、理屈を考えることなく、耳で聞いた中国語で自然な発音を獲得した人もいるでしょう。
その場合も、理屈を学ぶ段階はすっ飛ばしたのでしょうけれども、どこがポイントなのかを意識下で感じ取り、それを表現しているはずです。
キーポイントを知って、それを訓練すれば必ず上手になりますから、興味があったら挑戦してみてくださいね。