トルファン 2000年
夏まっさかりの時期、 中国の西の果て、新彊ウイグル自治区に旅行に行ったときの思い出。
まさしく飛んで火に入る夏の虫。気象情報を見ると最高気温が摂氏40度を超えるのは珍しくなく、タクラマカン砂漠の熱風が容赦なく顔を打ちます。
しかし火焔山という観光名所があり、別名を火州というトルファンの真の姿を知るには、夏の旅行もまたよいもの。
たくさん採れるブドウを干してレーズンにする乾燥小屋がたくさんあります。
ブドウ棚の下で民族音楽を聞き、民族衣装をまとったダンサーの陽気な踊りをみることができます。
私がトルファンを訪ねたのはもうだいぶ昔ですが、寝苦しい夏にはいつもあのトルファンの夜を思い出します。
西域の魅力たっぷりの夕食を食べ、西域の魅力たっぷりの民族舞踊を堪能すると、そろそろ空も暗くなって気温も落ち着いてきます。
町のそちこちで人々が夕涼みに出ています。
それでもきっと35度は下らないのだと思いますが、湿気がないので、風さえあればすこしはしのぎやすいのです。
夜の砂漠を見物しに行こうと、借り上げた馬車の荷台に揺られて町を横切って行ったのですが、そこで大発見。
あちこちの住宅の前にベッドが運び出されているのです。
その家の人はそこで一晩眠るわけです。雨さえ降りそうになければ、風のある屋外で寝るのが気持ちいいのですね。
夜でも暑いトルファン住民の寝場所は
中国で売られている一番安いベッドは、鉄パイプをつなぎ合わせた簡易ベッド。
枕の側のパーツと足の側のパーツ、そしてそのパーツを連結するパーツの4つに分かれています。
枕側と足側は90センチ幅で高さ70センチくらいの柵の形。
その柵を連結する形で長いF型のパイプを2本取り付けると人1人が寝られる長方形ができます。
そこに寝台になる90センチ×190センチくらいの板を上から載せて布団を置けば完成。
大学などの寮に置かれている一人用のベッドは大抵この形でした。
いたってシンプルなので、分解も簡単だし、ちょっと頑張れば持ち運びも可能。
というわけで夏のトルファンの住民たちは、この暑いのに屋内で眠れるかい、とでもいう勢いで、日が暮れるとパイプでできたベッドを玄関前に運び出し、夕涼みをしながらそこで眠ってしまうわけです。
そんな夜は明け方の最低気温も26度くらいはあるので、風邪をひいてしまう心配はないようですね。
寝苦しい夜、私も外でデッキチェアでも出して夜風に吹かれて眠りたいな。
ハンモックでも可。
あ、でも蚊帳はほしいな。
……いや、それより先に各戸のエアコンの室外機が熱風を吹き付けてきます。
これ砂漠の熱風並みです。
ヒートアイランド現象のいちじるしい街なかでは、トルファンのように気持ちよく屋外で眠ること自体が夢なのでした。