日本人発音講師による中国語発音矯正専門教室

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りんず中国語ラボのレッスンは「中上級者のための日本人講師による中国語発音矯正レッスン」です。安定した発音が定着し、身につけた発音が退行しないトレーニング方法をお伝えします。中国語の発音を矯正したい方、キレイな発音に憧れている方はりんず中国語ラボへ。

  1. りんずの講師ってこんな人

翻訳研究会の思い出

構音障害(側音化構音)の克服と中国語

あの一時期、集中してトレーニングに没頭したことがその後十年の基礎を作った。
その熱に浮かされたような時期を、自分の成長の一段階として懐かしく思い出します。

中国古代史専攻の大学院生として、図書館にこもって諸橋大漢和や漢語大詞典と格闘し、半泣きで修士論文を出したのが25歳のこと。

そのころ、webサービスはまだ黎明期で、ホームページを作るには自分でHTMLを手書きしなければなりませんでした。
そんな環境の中で中国語学習に関する情報を得るには「パソコン通信」という手段があり、大手サービスだったNIFTYサーブがわたしの唯一の情報源のようになっていました。

NIFTYのパソコン通信には分野ごとに分かれた巨大な掲示板があり、中国語の掲示板はさらに20個くらいの分野に細分化され、ピンポイントに興味のある分野にアクセスできるというほど成長していました。
アスキーアートというのが編み出された時代です。画像や動画などはなく、文字だけでやりとりする世界でしたが、毎日のぞきに行っても全部は見尽くせないほどの豊富な情報の海に溺れることができる世界でした。
管理役を自主的に務めてくださる方々のおかげで自律的に「荒れない」運営が保たれていたのも素晴らしいことです。

1997年だったと思いますが、そこで永田小絵先生が、翻訳の勉強会を立ち上げようと思う、という構想を投稿されました。
課題として中国語の原文を出すから、それを日本語に翻訳し、参加者同士で添削意見を出し合い中文和訳の力をつける、というのです。
博士課程に進み、将来は翻訳を仕事にしたいと考え始めていたわたしはそのお誘いに飛びつき、一も二もなく参加しました。

その運営方法は今で言うならFaceBookグループかオープンチャットを使うところでしょうが、当時はメールのやりとりで進められました。

多い時には4人班が4つか5つにもなる人数が集まり、翻訳訓練の始まりです。

課題文を辞書をひきひき日本語にしてメールで投稿。
よしよし、うまくできたぞ、と思っていても、他の方の訳文を見ると「なんて滑らかな日本語なんだろう」「あの単語をこんな訳語に訳していいのか」と目から鱗が落ちるばかり。
そしてメンバー相互の建設的添削を行うことが義務であることもなかなかよいシステムで、意見を出すためには他メンバーの訳文を真剣に読み込みますので、その過程で原文の意図や翻訳者の翻訳意図も読み取れるようになってきます。
そうすると、自分の訳文の不足も見えてきますし、次回の翻訳にはこう活かそう、という学びにもなりました。

添削意見が出そろった頃に永田小絵先生からも訳例が出されるのですが、それがまた全てのメンバーの翻訳を圧倒する、スキのない、しかも豊かな翻訳で、うちのめされるほど。

それが、毎週続くのです。

この翻訳研究会に参加すると、時間的な負担がかなりのものでした。
翻訳するという作業自体に慣れていないから時間がかかるというのもありますし、メンバー相互添削にも時間がかかりました。
ちょうど参加中にわたしの中国留学も始まったのですが、北京大学の寮の机で、もう一つの授業のようなつもりで真剣に取り組んだものです。
フィールドワークに出かけてネット環境が確保できないだろうという時には、1ヶ月単位で休会するなどして、北京に帰ってきたらまた再開。
そのころは清華大学の先生に家庭教師になっていただき高级汉语を教わっており、そちらも課題が間に合うかどうかぎりぎりという半泣き状態で取り組んでいましたので、机にかじりついて部屋と学食を往復する生活です。

わたしは学生だからこそじっくり取り組めましたが、フルタイムのお勤めをなさっている方などはどうやって時間を捻出していたのだろうと思います。
訳文が出せなくなる、添削意見が出せなくなる、など、活動が継続できずに泣く泣くリタイアしていく人もありました。
ある程度の量の翻訳を、毎週決まった日に必ず提出する。
そして提出した後も考える。

この工程は、筋トレにも似て、頭蓋骨の中で脳みそがぎゅんぎゅん活動しているような体感さえ伴う学習でした。
わたしたちは翻訳の筋トレをしていたのです。

その後、念願かなって翻訳会社から翻訳を受注するようになり、あの翻訳研究会でのトレーニングは間違いなく生かされました。
翻訳を行うスピード。
原文に忠実でありながら和文として自然な翻訳。
それができているかどうかはともかく、それに意識を向けて翻訳すること、そのための筋力が身についているな、という感覚がありました。

後に翻訳者育成団体の設立に関わることになりました。
そこで会員の翻訳力を上げるための学習機能の必要性が議論されたことがあります。
わたしは、あの翻訳研究会の方式を念頭に学習会を行うという提案を出しました。
学習会は違う方式で運営されることになりましたが、その学習会が生まれて今も継続していることも翻訳研究会のレガシーの一つだと自負しています。

翻訳研究会で同じ班で切磋琢磨した方とは、いまではtwitterでつながっていて、それぞれのご活躍を喜びあっています。

今思えば、あの翻訳研究会は無料で運営されていました。
たいへんなお手間をかけていらっしゃったはずの永田小絵先生にも改めてお礼を申し上げたいと思います。

「脳に汗をかく」という表現はあながち誇張でもないこと。
基礎トレーニングの時期は、ほんとうに「脳に汗をかく」ほどの訓練をするのがよいこと。

その努力はかならず実を結ぶと知ったこと。
これはわたしのその後にも大きく影響を及ぼす体験となりました。

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