発音講師、ボイトレを受けに行く
わたしはわりと大きな声が出るほうで、小学生時代の内気な少女はどこへやらという感じです。
声が大きいということは「周りに聞こえるからもっと小さい声で話して」とたしなめられることがある以外は、あまり困ることはありません。
まあ強いて言えば、普段から声の小さい家人と比べたら、わたしのほうはかなり具合が悪いのに大きな声は出るので、具合の悪いことに気づいてもらえないなんてことはあります。
でですね。
発音講師をしていると、受講生さんの発声についてもアドバイスをすることがあります。
多くは中国語らしい発声の特徴をお伝えして、「あら中国語らしくなった!」とお喜びいただけています。
ですがたまに、「大きな声を出すにはどうしたらいいでしょう」というご相談を受けることもあるんですよね。
中国語をやる以上は声が大きくないといけない、と思っている方も多いみたいで、それについては持論があり、「そんなことないんですよー」とはお話しするのですが、中国語云々ではなく、純粋に「もっと大きな声を出せるようになりたい」という望みをお持ちの場合、さあ、どうしたらいいのだろう? と、ずっと思っていたんです。
ボイトレを受けたら日本語音読の基礎が学べた
それで、自分自身のブラッシュアップのためにも、と思って
通訳者による通訳者のためのボイストレーニングをおこなっている平井裕子先生の門を叩きました。
平井先生はNHKなど放送局でキャスターをされた経験もお持ちで、アナウンス学校で教わるようないろんなことを教えてくださいます。
日本語の音読の時、子音と母音の組み合わせや前後の単語との関連で、このケースではこの発音になる、という規範が決まっていること。一部は聞いたことがありましたが、全体はよく知りませんでした。
滑舌の基本や、美しく聞こえる音読のコツなども習って、望み通りブラッシュアップができました。まあ、わたし自身の仕上がりはまだまだ修練が必要ですが。
実は平井先生とは仲良しなので、プライベートな話題も交えながら、毎回わっはっはと笑いながら楽しいレッスンでした。
また時機がきたらよろしくです、平井先生♪
では声の出し方、ノドの使い方はどうしたら?
でもまだ悩みが。
それはレッスンで話したり、セミナーで話したり、YouTube で話したりするとき、
ようするに「よそ行きの声」で話すときに、どうもノドが疲れてしまうことです。
ある年は風邪の当たり年で、長引く風邪でセキ喘息がでて、一年に二度も「声が出ないのでレッスンができない」という非常事態に。
平井先生にも、ノドに負担をかけない声の出し方は習ったんですが、ちょっとわたしが下手でまだうまく取り入れられなかったんです。
あとは、冒頭の「大きな声になるにはどうしたらいいですか」という問いの答え。
わたし自身が克服したことのない課題なので、まだよくわからないんですよね。
強いて言えば、通った県立高校が旧制中学のバンカラの遺風でやや旧時代的な応援歌練習という文化を持っていて、それでそうとう大きな声を出す練習はしましたが。。。
発声のギークを発見して喜ぶ発音のギーク
そうこうしているうちに月日は流れ、あるとき偶然の出会いから、OL出身の現役声楽歌手、声帯医学も学んでいるカリスマボイストレーナーのかくばりゆきえ先生を紹介していただいたんです。
このゆきえ先生は、特技が
人の声を聞くだけでどこの筋肉を使ってどのように発声しているかが瞬時にわかる耳
だっておっしゃってるんです!
「中国語音読を聞くだけでどこの調音部位を使ってどのように発音しているかが瞬時にわかる耳」を誇っているわたしとしては、その自己紹介にずきゅーん♪♪と射抜かれてしまいました。そして、、、
私自身、声によるストレスに悩み、人前に立つと真っ白になるあがり症でした!「ストレスになる声」「人を癒す声」信頼される話し方」「伝わる発声法」を人生をかけて研究してきました
っておっしゃってるんです。
わたしは、タクシーで自分の実家に帰ろうにも地名を聞き取ってもらえない構音に悩み、「伝わる日本語」「聞き取りやすい日本語」を追い求め、「伝わる中国語」「聞き取りやすく信頼される中国語」を人生をかけて研究するにいたりました。
しかもですね。わたし、このあいだちょっとtwitterで露見したんですけど、もうフェチの領域にちょっと入ってるんですね。
わたし胃カメラがだいっっ嫌いなんですけど、一瞬見える声帯の美しさといったら。
声帯を見るためなら、もう一回麻酔なしで胃カメラしてもいいなー、くらい見たいです。— 井田 綾(りんず)日本人中国語発音講師 (@aida0627) May 28, 2021
で、ゆきえ先生はというと、イタリア声楽とドイツ声楽できたえられたうえに、日本に数ある耳鼻咽喉科医院のなかで、診療科目として音声言語医学の看板を掲げているクリニックはたった2つしかない、そのうちのお一人の先生に師事して声帯医学を極めつつあるというギーク。(←ほめことば)
だからね、もう、ゆきえ先生ご自身のパーソナリティにも興味津々。著名人のトレーナーを担当なさったり、国連のプロジェクトを主催なさったりとお忙しいので、マンツーマンレッスンの受講は2ヶ月待ちなのですが、即決で予約を入れたんですよ。
そして2ヶ月の時は流れ、ついにゆきえ先生のレッスンを受けました。
「がんばったら出せる声」が「がんばらなくても」出せた驚き
もうね、何事にも専門分野はあるものなのだな、と思いました。
これまで、中国語音読に限らず、印象のよい話し方を目指してそれなりによい日本語が話せた時、仕上がりの録音はまあまあよくても、ノドが疲れるなあ、という自覚があったんです。
今回、2時間以上に及ぶレッスンの最後に音読をしてみたときには、なんと、その疲れを感じずに読み終えることができたので驚きました。
「あんなにがんばってがんばって出したら出ていた声が、がんばらないで出せた!」
本人だからわかるその違い。
ビフォーアフターの記録として、合計3回の音声を同じ原稿で録音しましたが、どんどん変わっていくパフォーマンスにびっくりします。
「アナウンサーのような品格のある美声」「明瞭なのに柔らかい」だなんて、わたしが「よそ行きの声」で出したいイメージそのものですね。嬉しいです。
そうだ、今回、わたしの憧れの話し方の人として、董卿姐の映像を事前にお送りしていたんです。
そうしたら、董卿姐の話し方はどんなところが魅力的なのか、その発声はどんな特徴があるのか、ゆきえ先生は中国語がお分かりにならないのにすっかり分析して教えてくださいました。
(わたしの声は董卿さんに似たタイプですよと評価していただき非常に喜ぶわたし)
ゆきえ先生からのレクチャーの内容はおもに3つのアプローチ。
まずは印象をよくする「話し方」。そして目指すキャラクターに合わせた「声の使い分け」。そして、ノドを傷つけずに楽に発声できるようになる「アクティビティ」。
↑
(わたしが勝手に整理しました)
たくさんお持ちの指導法の中から、わたしに向いたものを中心にお話しくださったので、受講者が違えばまた違うアドバイスになると思います。
声の大きさについては、大きいことばかりがいいことではない、そうでない方がいいこともある、というご意見でした。
わたしと同じだ。安心。
とは言え、ゆきえ先生のアクティビティを実践したら、自然に無理なく大きな声が出てしまいますが^^
何を誰に学ぶか
いやいや、感動冷めやらないんですが、以前からちょっとごちゃっとしていた概念が、今回、整理できました。
かつてのわたしの日本語のように発音のクセがある人は、「発音のクセの直し方」を習うといいのですが、それはボイストレーナーの領域ではなくて、言語聴覚士の領域です。
「外国語の発音のクセの直し方」は、その外国語を教えている講師から習うといいのですが、クセを直す上で必要な知識は言語聴覚士の構音指導と似ているので、一番いいのは講師がその言語に関してだけでもいいから音声学の知識を持っていることですね。
(日本語教師の資格をお持ちの方は、資格試験の準備で学んでいらっしゃるので、中国語の発音矯正でも習得が早いです)
でもって、ボイストレーナーという肩書きの方には、「歌」を教える方と、「話し方」を教える方がいらっしゃるんですね。
歌が専門の方でも、話し方が専門の方でも、それぞれ発声についてコメントしてくださるし、指導もおできになると思います。
で、ゆきえ先生は、歌も話し方もどちらも指導できるんですが、「特に発声指導に強い」先生なんですね。ほかにどんな先生が世の中にはいらっしゃるのかわたしは未知の領域でまったく存じ上げないのですが、ゆきえ先生の、一つのことをうんと掘り下げてきて「分かってる」感じ、すごいと思いました。
独学とはいえ音声学を学んだ発音講師のわたしが、アナウンススクールと同じ指導ができる平井先生のレッスンを受けた経験があってなお、初めて学ぶことがたくさんありました。
また、受講生に教える講師としてのあり方の面でも、とっても勉強になりました。
ゆきえ先生のメソッドにご興味おありの方はこちらからどうぞ。2ヶ月待ちなのはご覚悟を。