受講生:先生! 最近、語学系のYouTubeをよく見るんですけど……
りんず:いいですねえ。わたしイチオシのチャンネルは李姉妹チャンネルですよ。
受講生:あ、見てます! で、気がついたことがあるんですが。
りんず:なんでしょう?
受講生:“an”と“ang”の“a”のところ、なんか違う発音に聞こえるんです。気のせいでしょうか?
りんず:それはいいところに気が付きましたね。じっさい、音は違ってるんですよー。しくみを解説しましょう!
母音は一音節でひとつ
“an”と“ang”、ピンインを見ると、「 a + n 」「 a + ng 」に見えますね。
でも、それはつづりの話。
実際の発音は、“an”でひとかたまり、“ang”でひとかたまりなんです。
“an”が一つの母音、“ang”も一つの母音で、それぞれ固有の響きを持っています。
質問者さんは、“a”には決まった発音があって、それに“n”や“ng”がつづくものだと思っておられたのですね。
“an”の初めの部分、ピンインで“a”と書かれている部分の発音は、単母音の“a”に比べると舌の高い位置がやや前寄りの場所で発音する音です。
音節の最後が“n”になって終わることを考えると、前寄りの“a”で始めることで、いくらか省エネができますね。
逆に“ang”の初めの部分の“a”は、ピンインは同じ“a”ですけれども、単母音の“a”に比べると舌の高い位置がやや後ろ寄りになる発音です。
少しアゴも開き、口の奥のほうの天井も高くなる、オペラ歌手が唱歌を歌うときの「あ」のような響きになります。
音節の最後が“ng”になって終わることを考えると、ゴール地点に近い後ろ寄りで始めることで、やはり省エネになっています。
ローマ字が同じでも発音が違うものがある
この“an”と“ang”のように、同じローマ字なのに違う音、という例はいくつかあります。
“a”だと、“ian”というのがあって、これは日本語五十音の「え」に近い音になります。
単母音の“e”と、複合母音の“ie”でも、“e”の部分の響きは異なります。
“an”と“ang”と“ian”は、もともと3つの響きの母音として中国語に存在していました。
それをローマ字を使ってピンイン表記を作ろうとしたときに、それぞれ“an, ang, ian”というつづりにすると決めた、そういうことなのです。
“e”と“ie”も、もともと2つの響きの母音として存在していた。
それをローマ字でピンイン表記を作ろうとしたときに、それぞれ“e”と“ie”というつづりにすると決めた、というわけです。
こんなわけなので、ピンインのつづりではなく音を覚える段階では、一つ一つのローマ字に着目するのではなく、音節全体の音の響きをよく聞いて、それを模倣してほしいと思います。
まとめ
- 母音は1音節を通してひとつの響き
- 同じローマ字のピンインでも発音が違うものがある
りんず:以前、“an”と“ang”の発音を克服した受講生さんがこんなことをおっしゃっていましたよ。
受講生:どんなことですか?
りんず:わたしに教わるよりもまえに、中国人のお友達から発音を教わっていたのだけれど、なかなか“an”の発音ができなかった。そうしたら、「こんなに言っているのになんでできないの!?」とお友達が腹を立ててしまい、しばらく友達付き合いもできなかった、って。
受講生:それは悲しい。。。
りんず:発音矯正レッスンで、“an”の発音のしくみを習い、“a”の特徴のことを知ったらあっというまに発音できるようになって、とても喜んでいらっしゃいました。トラウマが解消できた、と。
受講生:それは嬉しい!
りんず:はい、講師としてもとっても嬉しかったですね。発音をトラウマにしないで、中国語を楽しめる人がどんどん増えてくれたらいいな、って、いつも思っているんですよ。