日本人発音講師による中国語発音矯正専門教室

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りんず中国語ラボのレッスンは「中上級者のための日本人講師による中国語発音矯正レッスン」です。安定した発音が定着し、身につけた発音が退行しないトレーニング方法をお伝えします。中国語の発音を矯正したい方、キレイな発音に憧れている方はりんず中国語ラボへ。

  1. 中国語の発音のはなし

母音の口の構えで子音を発音することについて

中国語の発音と発音矯正

目次

    • まったく逆に見える指導指示
    • 「子音の発音に時間をかける」ための指導
    • 中国語の発音における子音の重要性
    • 子音を発音してから母音の準備をするとどうなるか
    • 母音の口の構えで子音を発音していい理由
    • まとめ

まったく逆に見える指導指示

発音矯正レッスンでお伝えしているポイントの一つに、「先に母音の口の構えを準備し、その構えのまま子音→母音の順に発音する」というコツがあります。
このコツはとても有効で『りんず式中国語発音矯正』でもコラムで取り上げており、自信を持っておすすめしています。
ですが、まったく逆の指示を提示していらっしゃる先生の指導も存じ上げています。

ですので、両方の説を聞いた方は、「いったいどちらを信じれば」と混乱してしまうと思います。
その先生のご指導、ご活動はわたしも尊敬しており、根拠のあるお考えでいらっしゃることは承知しています。

なぜ、このような相反する指示が指導現場で行われているのでしょうか。
実は、その先生が意図していらっしゃることは「子音の発音に時間をかける」ということなのです。
それについてはわたしもまったく同感で、中国語の重要ポイントとしてお伝えしています。
ですので、まったく逆に見える指導指示が存在している理由は、

    • 子音の調音が疎かになっている学習者の指導
    • 子音の調音のせいで母音の調音が阻害されている学習者の指導

のどちらにスポットを当てているかの違いによるだけなのだと思われます。

今回はこの、子音と母音の調音をめぐる混乱を解きほぐしたいと思います。

「子音の発音に時間をかける」ための指導

わたしのおすすめしているコツとまったく逆に見える指導指示とは、このような指示です。

まず子音本来の口のかたちを作って子音を発音し、そのあと続けて
(その子音にあうように歪めた口のかたちで) 母音を発音します。

その意図はこのように、子音の発音に時間をかけることにあります。

そして中国語の子音を発音するときは、
日本語の子音の一・五倍から二倍の時間をかけるつもりで、
ゆっくりめに発音してください。

たしかに、子音の発音に時間をかけることは、中国語においてとても重要です。
以下にその理由を挙げましょう。

中国語の発音における子音の重要性

下の図をご覧ください。ここには中国語の子音をすべて表示してあります。
調音部位によって横方向に薄い色でグループ分けしてあります。
そして、調音方法によって太い線でグループ分けしました。

【調音部位】発音に使う位置が発音器官のうちどこか
【調音方法】発音器官の上のパーツと下のパーツが接近・接触して離れるときの調整のちがい

左上で太い線に囲まれていない「b, d, g」は破裂音の無気音です。
その下の「j, zh, z」が破擦音の無気音。
その右の「p, t, k, q, ch, c」が破裂音と破擦音の有気音。
その右で行をまたいでいる「m, n, l, r」は鼻音・側面音・摩擦音で、有声音。
有声音の間にあるの「f, h,x, sh, s」が摩擦音。

このうち、太い線で囲まなかった「b, d, g」は、子音の閉鎖を開放すると同時に母音の声が出ます。
このグループは完全な無音状態から声を発するという意味で、子音の発音より前に時間をかける必要があるといえばあります。

それ以外の太い線で囲んだ全ての子音は、子音の発音をスタートした後、母音の声が出るまでの間に時間をかける必要があるものです。

  • 破擦音の「j, zh, z」、摩擦音の「f, h,x, sh, s」では、母音よりも前に摩擦音を聞かせます。
  • 有気音の「p, t, k, q, ch, c」では、子音の閉鎖の開放の後、母音よりも前に気流の音を聞かせます。
  • 有声音の「m, n, l, r」では、子音で閉鎖をしている間に声帯から出す声を聞かせ、それからやっと母音の声を聞かせます。

つまり調音方法の仕組みから言って、子音の発音に時間をかけないとその音節の規範的な発音にならないのです。
子音の調音を軽く済ませてしまうような発音だと日本語の母語干渉を感じますし、子音をしっかり調音すると「中国語らしい」音になるというわけです。

子音を発音してから母音の準備をするとどうなるか

まじめな学習者さんほど、子音の重要性もご存知ですので、子音の発音も真剣です。
子音の発音に時間をかける調音も実践してくれます。
ところが、その際に起こりがちな発音のクセがあり、そのクセは多くの学習者さんに見られるのです。

例1:shang

shi と発音してから ang をくっつけるので「しあん」と聞こえてしまう。

例2:fan

歯が下唇にまだ付いている時に、摩擦音だけでなく母音の an の発音を始めてしまうので「ふあん」と聞こえてしまう。

例3:dou

脱力した平唇のまま d の閉鎖を解放してから ou をくっつけるので、「どぅおう」と聞こえてしまう。

例4:zhu

zhi と発音してから u の口の構えを作るので「zhぃう」というような音に聞こえてしまう。

などなど、こうした例は枚挙にいとまがありません。
これらのケースでは「先に母音の口の構えを準備し、その構えのまま子音→母音の順に発音する」というふうに順番を調整することで、スッと規範的な発音になるのです。

母音の口の構えで子音を発音していい理由

では、わたしがおすすめしている「先に母音の口の構えを準備し、その構えのまま子音→母音の順に発音する」の方式で発音すれば、本当に大丈夫なのでしょうか。
そういう発音をしていいのでしょうか。
そうご心配の方に、それでよい理由をお話ししましょう。

母音が異なれば、口の構えはかなり異なります。
例えば母音「a」では口の中の空間が横に広くなります。
母音「u」では口の中の空間が細く狭くなります。

母音の音を決める要素は以下の3つです。

    1. 唇の形
    2. 舌の最も高い部位の位置
    3. アゴの開き方

声帯で発生した声が口か鼻から出ていくまでに通る空間を声道と言います。
母音の音は、その声道がどんな形をしているかで決まるのです。

それに対して子音の音を決める要素は以下の3つです。

    1. 調音部位
    2. 調音方法
    3. 母音とのつながり方

このうち「1. 調音部位」は前後の位置、「2. 調音方法」は接近・接触と離れ方の方法、「3. 母音とのつながり方」はタイミングによって決まります。
ということは、母音の要素の「1. 唇の形」「2. 舌の最も高い部位の位置」「3. アゴの開き方」、つまり声道の形によって影響を受けません
どんな母音のための構えをしていたとしても、思う通りの子音を発音することができるのです。

※ もちろん子音と母音の特定の組み合わせというのはありますので、中国語としてあり得る組み合わせの範囲内で、ということです。

たとえば、子音「zh」なら、母音「a」の口の構えでも母音「u」の口の構えでもどちらでも発音することができるので、結果として音節「zha」と音節「zhu」が生まれます。

もし「(子音 zh の形)にあうように歪めた口のかたち」と言った時、舌を調音部位にセットした状態のことを指していらっしゃるのか、もしくは zh, ch, sh, r の後でしか出ない母音 -i のための口の構えを指していらっしゃるのかは分かりません。
しかしいずれにしても、例えば zha という音節を発音したい時に、そのままの口の形では母音 a を発音することはできません。
zha をクリアに発音するためには、単母音 a の口形をしっかりとセットする必要があります。

まとめ

「子音にあうように歪めた口のかたちで」という指示、「母音の口の形を作って発音する」という指示、いずれの指導を受けたとしても、目的としている規範的発音は同じはずです。
どんなクセを持っている人を想定してのアドバイスなのかが違っているだけなのではないかと考えます。
中国語らしい発音にするために、子音の発音には日本語より時間をかける
中国語らしい発音にするために、母音の発音はしっかりと母音の口の構えを取る
それぞれに、そういった意図があっての指導指示だと思います。どちらのアドバイスでもいいから自分の発音が変わるトリガーを見つけて、お手本の音声と同じ発音ができるよう、いろいろと実験してみましょう。


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