日本人発音講師による中国語発音矯正専門教室

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りんず中国語ラボのレッスンは「中上級者のための日本人講師による中国語発音矯正レッスン」です。安定した発音が定着し、身につけた発音が退行しないトレーニング方法をお伝えします。中国語の発音を矯正したい方、キレイな発音に憧れている方はりんず中国語ラボへ。

  1. life-story

構音障害の内気女子が中国語キャスターになるまで(5)(最終回)

発音矯正専門日本人講師井田綾のブログ

自分の母語である日本語の発音矯正ができた!
それに中国語も楽しい!
……という喜びを味わった20代。
20代の終わりには中国留学もして、いろんなことに揉まれました。
サバイバルも味わい、ネゴシエーションも体験し、自分の無知も知り、内気女子はすこしずつ大人になっていきます。

研究者になるつもりで大学院にいたのですが、分野ちがいの中国語の方がおもしろくなってきて、博士論文を出さずに大学を去ることにしました。

ショック! わたしって仕事が下手!

大学院生時代にあちこちで中国語講師として働き始めていましたが(←人見知りでもがんばった)、その中のある企業に社員として就職することになりました。
中国語レッスン教材開発の仕事と中日翻訳コーディネーターの仕事が与えられるという、中国語講師の仕事と、中日翻訳の仕事が同じくらい好きだったわたしに、天の恵みのような職場でした。

ところが!
わたしは働きすぎて体を壊してしまいました。
指示された仕事を全部ひとりでこなそうという姿勢で、無理な納期も呑んで取り組んでいたので当たり前です。

あの頃はまだ、チームで仕事を進めていくこと、無理なら無理と言って現実的なラインに落とし込むこと、そういった働き方のことがよくわかっていなかったのです。
ようするに仕事が下手。

20歳そこそこの新入社員がよく陥るやつだと思うのですが、それをわたしは30歳過ぎて経験し、たちどころに体力・免疫力がダメになりました。
「こんな忙しいところ、ダメだー」と思っているところに、学生時代から憧れていた出版社の求人を見つけ、転職しました。
ところが、すでに体力・免疫力を失っていたわたしは、3年ももたずに傷病休暇を取ることになってしまいます。
好きな会社だったのに。

結局、1年間の傷病休暇では回復できず、やむを得ず離職。フリーランスとしての職業人生が始まりました。好むと好まざるとにかかわらず。
35歳、独身、さあどうするのでしょう。

オーディションを受ける

そうなると、具合が悪いとかなんとか言っていられません。
・翻訳会社から実務翻訳の仕事をうける。
・講演の通訳をうける(←内気でも大勢の前に立った)。
・辞めた職場から書籍の編集や翻訳の仕事をうける(←感謝に堪えません)。
・親戚からDTP組版( ※ 出版の一工程 )の仕事をうける。
・動画セミナー教材の講師として収録をする。
・2008年オリンピックの旅行需要を当て込んだ語学ムックの監修を引き受ける。

もう、中国語や出版に関わる仕事なら何でもやりました。断る選択肢なんてありません。

そんなとき友人から「NHKで中国語をしゃべる仕事のオーディションを受けないか」という誘いがありました。どんな仕事でも断りませんから、オーディションがあろうがなんだろうが受けに行きます。

履歴書を書き、小論文を提出し、スーツを着て行ってみればそれは、NHKがインターネットで実験的に開始していた動画ニュース配信の仕事でした。日本語ネイティブのわたしが世界の公衆に向かって中国語でしゃべるなんて、ちょっとわくわくしますね。

オーディションは、事前に渡されたいくつかのニュース原稿からふたつを選び、テレビカメラの前で音読する。
ニュース原稿は、読み方に幅を持たせることもできるんですよー、というアピールを意図して、かたい内容のニュースと可愛らしい小動物のニュースという対照的なふたつを選びました。
それから中国人ディレクターとテレビカメラの前で中国語トークをする、という試験もありました。かつての内気女子、緊張を表に出さずににこやかに話し切ることができました。20代でいろいろ揉まれたことは、こんなところで役立ったようです。

いま、その頃の録音を聞くと中国語がとても未熟で、恥ずかしくて頭を抱えたくなってしまいます。
(←いまでさえまだまだである)
けれど、若さゆえの元気さはありました。

合格したのは、中国語ネイティブの女性二人と、日本語ネイティブの女性がわたしをいれて二人。
もう一人の日本語ネイティブの彼女は、幼い頃に北京で暮らしたことがあるそうで、発音のつなげかたに“地道(本場らしい)”な味わいがあります。
中国語ネイティブのお二人も中国語が美しいのは当然ですがそれぞれに個性が異なり、人選の意図も透けて見えます。「ああ、このメンバーの中でわたしの立ち位置は、非ネイティブ学習者が頑張っている感じを出す係なんだな」と思ったものです。

それでもオーディションに合格したことは事実だから大喜びでしたし、「日本人の中ではとっても発音がいい」とおだてていただいて、まあ気持ちよく仕事をしていたんです。適度な緊張感もあって、いい仕事でした。
収録のために1日は練習時間が取れるスケジュールでしたので、一つの原稿を何度も何度も音読します。それまで、大きな声で原稿を音読するということはしたことがありませんでした。
(←中国語のレッスンの予習も小さな声でボソボソと読んでいた)

この時から、音読が好きになりましたね。

音読サークルをはじめる

その翌年、結婚して子供を授かってからしばらく、わたしは人生の夏休みに入りました。
そして9年にわたって雌伏して、2017年にオンラインの中国語講師を始めます。

そのうち「仲間と一緒に音読がしたい」と思うや矢も盾もたまらず、音読サークルを立ち上げました。
それが「中国語の音とリズムを楽しむ音読サークル〈玲瓏りんろん〉」です。毎月1回ペースの音読イベントを始めたのです。
すると、思った以上に大勢の人が集(つど)ってくれました。

それに、思った以上に上級者さんが多く参加してくれました。
そういう場を求めても得られないでいた人が大勢いたということが、それでわかったのです。

その後、SNSが使いやすくなり、音読が流行るようになったのはご承知の通りです。みんなが自分の音読を「晒して」励まし合うという文化が急速に広がりました。
他の人の頑張っている姿というのは刺激になるものです。
さいきん、学習者さんたちの音読のレベルも広範囲に底上げされてきています。

音読サークル〈玲瓏りんろん〉は、わたし自身が音読練習をする動機にしたいと思って始めた面もありますが、みんなが楽しく頑張る姿が嬉しくて、実際、とても刺激的です。
このサークルは、おそらくわたしが生きている限りずっと続けていくでしょう。

そしてそのイベントで、にこにこと司会進行をしているのはわたし。
「あなた、昔は内気女子だったんですってね」と尋ねたら、「あら、なんのことかしら〜」とうそぶいてそうな。
ひょっとしたらふてぶてしささえ感じるような。そんな大きな女子に育ちました。

言葉を学ぶことは外界とコミュニケーションをとること。
必要は発明の母。
そんなことを思いながらこの半生記を締めくくろうと思います。

( 完 )

構音障害の内気女子が中国語キャスターになるまで(1)
構音障害の内気女子が中国語キャスターになるまで(2)
構音障害の内気女子が中国語キャスターになるまで(3)
構音障害の内気女子が中国語キャスターになるまで(4)
構音障害の内気女子が中国語キャスターになるまで(5)


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