中国語ネイティブの人どうしの会話を聞いて覚えた言い回し。
「我希望你们忙。Wo3 xi1wang4 ni3men mang2。」
〈主語+述語〉、述語=〈人称代名詞+形容詞〉という何の変哲もない構文なのですが、行間には実に豊かな意味が詰まってました。
あるオフィスでの場面です。ある用事のためにAさんが訪ねてきました。
A:你好!
Aさんの相手が席を外していたので、Bさんが応対に立ちました。「どうぞどうぞ、お茶を飲みますか?」
B:你好!你来了!先坐会儿吧。喝茶吗?
Aさんが「お気遣いなく」と答えます。
A:好的。谢谢,不用,你忙你的。
Bさんが、「いま会議中でちょっと慌ただしくて、すみません」と一言あいさつします。
B:我们在开会,不好意思……
すかさずAさんが次の一言。
A:没事儿,我希望你们忙!
「我希望你们忙。」=「 * あなた方がお忙しいことを私は希望します。」??
さて、このフレーズ、話し手はどういう意図で発言しているでしょうか?
1.私のために忙しく働いてほしい。
2.ヒマそうにしていないでせっせと働いてほしい。
3.そのまま忙しく働いていてほしい。
どれもぴんと来ないですね。強いて言えば「3.」の意味が近いのですが、TPOの知識がいるようです。その場で解説してくれたWさんの解釈によると…。
Bさんが「忙しい」という言葉をマイナスの意味で使った。
↓
Aさんはプラスの含意のある「希望する」という明るい言葉を使うことで、Bさんが込めたマイナスの価値判断を逆転させた。
↓
さらに、「自分に対する気遣いは無用だからそのまま仕事を続けてください」という言外の意味を込めた。
↓
ここで話し手と聞き手の間に、「オフィスで働いている人が忙しいというのはビジネスが盛んな証拠だから、良いことだ」という共通の認識が生まれる。
↓
そこで、Bさんの「お相手できなくてすまない」という気持ちもほっと落ち着く。
……とのこと。なるほど~。
今日の語彙:
「我希望你们忙。」=「 お忙しいのは良いことです。」「お忙しくなさっていた方が私も嬉しいです。」
相手は「你们」だけでなく、「你」でもよいそうです。
「我希望你忙!」
例えば、「忙しくて手が回らなくてすみません!」とか「忙しくていやになっちゃうよ!」とマイナスの意味で「忙しい」が使われたときに「我希望你忙!」と返してあげると、「いいことじゃないですか~、お忙しいのは商売繁盛ってことですよ~。」というような小ワザの効いた受け答えになるわけです。
述語は「忙しい」だけではなく、色々な場面で色々な言葉が考えられるそうです。
たとえば、入院中の人をお見舞いに行ったら患者さんが「ベッドで寝てばかりで退屈でしょうがないよ~。」と嘆いているような時には……。
「我希望你无聊! Wo3 xi1wang4 ni3 wu2liao!」
……で、「退屈なのはいいことですよ~。(なぜなら、じっと安静にしていればそれだけ早く回復するから。)」というような受け答えになるのだとか。
とっても翻訳しにくいフレーズですが、場面とタイミングが合えば温かな気持ちになれる言い回しですね。勉強になりました。