受講生:先生、教えてください!
りんず:はいはい、どうしましたか?
受講生:えっと、いま、エンジ色の発音の本で自習しているんですが。。。
りんず:ああ、いい本だと思いますよ。
受講生:第3声が連続するときの変調についてなんです。
「我买老酒。」は4文字とも第3声で、声調は「2223」と発音する
「我很好。」は3文字とも第3声で、声調は「223」と発音する
と書いてあるんです。これって、この教科書の通りでいいんですか?
ボク、今まで「2323」「323」って発音していたんですが。。。
りんず:なるほどなるほど。ではさっそく解説していきましょう!
お使いの教本に書いてあることは、その通りです。
でも、実際に話すときには、内容や感情によって、単語ごとに区切ることもあります。
(1)
”我” で区切りをつけたいときには ”我” を第3声で発音する。
つまり
「我买老酒。」は「3,223」と発音する
「我很好。」は「3,23」と発音する
(2)
でも、一気に発音したいときには ”我” を第2声で発音する。
つまり
「我买老酒。」は「2223」と発音する
「我很好。」は「223」と発音する
(3)
そして質問者さんがおっしゃるような読み方も可能です。
つまり、
「我买老酒。」は「2323」と発音する
「我很好。」は「323」と発音する
というように。
このように、場合によって変調の箇所が変わることはあり得ることで、しかも自然なことです。
ではなぜ、質問者さんのお持ちの本には、(2)の「2223」「223」方式が書かれているのか。
それは、中国語を習い始めたばかりの初心者さんに、余計な負担をかけまいという親心からです。
これはあるルールに従った読み方です。
第3声が続く場合、最後の一つだけは普通の第3声で発音し、それ以外のものはみんな第2声に発音すればよい、というルールです。
このシンプルなルールを心得ていれば、とりあえずは通じる発音ができるというわけです。
◇
ただし、ネイティブさんのもっとも自然な言い方は、(3)だろうなあ、と思います。
わたしは「それが自然です」「そういうものです」という説明では腑に落ちないので、理由を考えてみます。
(3)
「我买老酒。」は「2323」と発音する
「我很好。」は「323」と発音する
この場合、「我买老酒。」は2音節ずつ[我买]と[老酒]の2パーツに分けることができます。
すると[23]と[23]の組み合わせになる。
「我很好。」は「很好」を人まとまりの2音節として[我]と[很好]の2パーツに分けることができます。
すると[3]と[23]の組み合わせになる。
中国語では2音節を基本のひとまとまりとするリズムがありますので、多くのネイティブさんは自然とこのようなパターンで発音するものと思われます。
◇
そもそも、変調という現象が起こるのは、「第3声が連続すると発音がしにくいから」という理由があります。
ネイティブさんにとっては、あくまでも第3声をずっと発音しているつもりなのだそうです。
ネイティブ話者は第2声に変調していることに気づいていない場合もあります。
変調という現象を確実に知っているのは、中国語学を学んだ人か、そうでなければ中国人の中でも中国語の教え方を習った人です。
現地の大学院に在籍中の受講生さんから、こういう証言もいただきました。
変調について数学科の友人に「所以」の発音で確認したところ、 第3声+第3声だと真顔で言われました。 やはり一般的には気が付かないもののようですね。
「所以」は「第2声+第3声」なのか、それとも「第3声+第3声」なのかと実際に発音して尋ねたんだそうです。
すると答えは、
何を言っているんだ、「 所 suǒ 」+「 以 yǐ 」だよ、と。
なんなら辞書をひきたまえ、という勢いですね。
そして、中国の小学一年生向けの《语文》(国語)の教科書を見てみると
(教科書は受講生のMさんにご提供いただきました。ありがとうございます!)
四声のイメージはこんなのです。
第3声〜〜!!
「低く平ら」というイメージが微塵もありません。
「半3声」の片鱗もありません。
これが第3声のイメージなら、変調したときに第2声になるのも、「変調している」のか「第3声を自然に発音している」のかどちらかわからなくなっても当然ですね。
ネイティブさんは、半3声で発音するのか、第2声で発音するのか、頭を使って考えることなく、生理的に発音しやすい方法を選んでいるだけなのかもしれません。
りんず:つまりね、自分が気持ちよく発音できればそれでいいっていうことなんですよ。
受講生:うーん、(1)でも(2)でも(3)でもよいと言われると迷っちゃうんですが、、、
でもまあ、ボクがこれまで考えていた変調でもよいということがわかったので、ひとまずは安心です!