あるとき依頼を受けました。
連絡が取れなくなってしまった中国の知人の電話番号を調べて欲しい、というのです。
勤め先に電話をしても、日本語の分かる人がいないのでそれから先に話が通じないのだ、とのこと。
さっそくその勤め先に電話をしてみます。
数回の“没人接”の後、落ち着いた声の女性が出ました。
人を探している、と告げると、じゃあ尋ねてみますよ、とのことで、翌日もう一度電話。
目的の人は、転職して違う会社に移ったとのこと。
その番号を教えてもらい、これで役目が果たせる、と大いに胸をなで下ろしました。
その電話を切るとき、相手の女性がこうおっしゃったんです。
“你什么时候到中国,给我联系!”
(いつか中国に来たら、わたしにも連絡してね)
突然電話して以前の従業員のことを尋ねて、ちょっとお手間をかけさせてしまったわたし。
もしかしたら二度と会うことも電話することもないだろう、そんな外国人に対して、単に
“再见”
で電話を終わらせるのではなく、何かあたたかい言葉のやりとりで終わらせる。
こういう習慣って、テキストではなかなか学べないことですよね。
尋ね人には無事に連絡がつき、わたしも顔が立ち、万事オーライ。
その間、尋ね人以外の人とも何度も会話を交わしましたが、途中にこういった嬉しいやりとりがあると、心も温まります。
しばらく会えない相手に対して、
“多联系!”
なんて言葉もよく言いますね。次への期待を持たせるあいさつ言葉。
その言葉を使うシチュエーションを適切に選べば、直訳した字面に現れる意味だけでなく、話し手の気持ちの温かみを伝えられる、よいあいさつ言葉になるのですね。
◇
“你什么时候到中国,给我联系!”
(いつか中国に来たら、わたしにも連絡してね)
これは、“什么时候”(いつ)という疑問詞を使ったフレーズですが、これは未然の事柄を漠然と表す「不定」の用法。
学生時代、まだその知識に乏しかったわたしは、この不定用法でとんちんかんな受け答えをしてしまったことがあります。
久しぶりに話す相手との電話で、
“你哪天再来我家玩儿!”
と言われたとき、“哪天”は「いつ」という疑問詞だという認識しかなかった私は
「ええと、まだ決めてません」「7月頃にまたおじゃまできるかもしれませんが分かりません」
なんて答えたんです。
“你哪天再来我家玩儿!”
(いつかまた遊びに来てね)
に対してのその答えですから、話がかみ合いません。
その電話はどうにかこうにか「じゃあまたね」と終わったのですが、わたしの頭の中には「?」が飛び交っていました。
そんな失敗で疑問詞の不定用法を学んだことがあったおかげで、冒頭の電話では社交辞令をすんなりと受け取れるようになっていた、というわけです。
よかったよかった。