『りんず式中国語発音矯正』には、伏怡琳(フ イリン)さんから素敵な中文エッセイを提供していただきました。さっそく発音レッスンで、その中文エッセイを音読素材として選んでいらっしゃる方もいます。
とてもきれいな中国語のエッセイなので、音読していても楽しくなってきます。
さて、いざ音読してみると、中国語と日本語の句読点の使い方に目がいきます。
中国語の読点で区切られた部分を観察すると、大抵そこには「主語」と「述語」のそろった文があります。
もちろん「二、三年前」「あの年」のような時間を表すフレーズがある場合もありますし、イレギュラーに区切られている場合はあります。今回は大多数の「主語と述語のそろった文」について書いてみたいと思います。
日本語は、文の途中で文の成分を区切るために、例えば主部と述部を分けるため、といった理由で読点「、」を使うことがほとんどです。
ですが中国語は、主語と述語があって文法的に完成している文が終わっても、なお読点「,」で次の文につなげることがあります。
たまにあるくらいじゃありません。しょっちゅうあります。
日本語の読点は右下に向かって止める「、」で、中国語の読点はカンマ「,」です。
これは翻訳者泣かせで、句読点を原文どおりにつけようとすると、ずいぶん長いあいだ読点「,」がなく、そして読点「,」があったと思ったらそこで文が終わらせたいような内容なのに、中国語の方はまだまだ先が続いている。
そんなことがしょっちゅうあるんです。
逆に言えば、日本語で「……は、……ので、……した結果、……となるはずだ。」というような構造の文をそのままで中国語に翻訳しようとすると、接続詞や複文を駆使した非常に「もってまわった言い回し」の中国語になってしまいがちです。
中国語と日本語とでは、読点「、」「,」と句点「。」の使い方が、まあ違うんですよね。
さきほどの
「……は、……ので、……した結果、……となるはずだ。」
という日本語文は、中国語文では
「文,文,文,文。」
というふうに「主語-述語」のセットを4つ作って文を並べるという方式にすればかなり自然になるはずです。
逆に
「文,文,文,文。」
という中国語文を、日本語文では
「……は、……である。そのため……だ。その結果……となるはずだ。」
のように、場合によっては読点「,」を句点「。」に変えて三つの文に分けたら自然になる、というような場合もあります。
こんなところに、翻訳者の腕のふるいようがあるわけです。
原文の意図を曲げずに、意訳に流れることなく、でも自然な日本語にする。
そういうことを考えながら翻訳をするのって、とても難しいのですが、それがまた楽しいのです。
『りんず式中国語発音矯正』の中文エッセイはいずれも名文、そして翻訳は翻訳コンペで勝ち抜いた翻訳者さんの作品ですので、よい翻訳であることは間違いありません。
お手元にお持ちの方は、中国語原文と翻訳文とを見比べてみるのも面白いと思いますよ。