中国語上級なのに発音の悩みが消えない人はこれが原因かも
発音に悩む中国語上級者の2つのタイプ
この記事は、HSKや中検で高い級を持っていても、なかなか発音に自信を持てない、という方に向けて書いています。
発音矯正を希望してレッスンを受けてくださる方には、かなり上級レベルの方もいらっしゃいます。
すでに仕事で中国語を使っている方や、これから中国語を使う仕事に就きたいと希望されている方も多いですね。
例えばHSKの5級や6級にすでに合格している、中検2級や準1級をすでに取得しているという方も少なくありません。
そういった上級者の方でも、発音矯正を希望される方が多いということは、「読み・書き・リスニング」の技能と「発音の自然さ」とが必ずしも一致しないということですね。
これまでわたしが出会った上級者さんは、発音の弱点からみると、大まかに2つのタイプに分かれます。
タイプ1:特定の発音要素が苦手なタイプ
タイプ2:緩急抑揚が苦手なタイプ
そして、ちょっと横道にそれますが、その方たちが正しい語順をマスターしているかどうかによって、それぞれ
「ちょっと聞き取りにくいけれど何言ってるか分かる」タイプと
「頑張って聞いてあげたら何言ってるか分かる」タイプ、
「単語やテーマはなんとなく分かる」タイプに分かれます。
語順については、またいずれ。
特定の発音要素が苦手なタイプの発音矯正トレーニング
「特定の発音要素が苦手」というのは、上級者に限らず初心者の方でも、非ネイティブだったら誰にでもあることです。
例えば
・ある声調がいつも不明瞭
・ある子音が/ある母音がいつも不正確
・思った通りの声調が出せない
・いつも決まったアクセントにしてしまう
といったクセを持っている方です。
上級者であれば、会話のやり取りはできるし、意思の疎通もできるが、ちょっとクセがある、というケースですね。
コミュニケーションが十分に取れるのだったら、それは「外国なまりがあるけれど中国語が上手な人」なわけで、発音の矯正も必要ないかもしれません。
日本のテレビで活躍する外国人タレントさんでも、ちょっとアクセントにクセがあったって会話に支障のない人がたくさんいらっしゃいますよね。あのイメージです。
ではその人が「発音をよくしたい」という強い意志があるなら、どうやって発音矯正をしたらいいか。
それには、次の過程が必須です。
1.どの要素が苦手なのかをはっきりさせる
2.自分の音声の録音を聞き、規範的でない個所を自分で見つけられるようになる
3.発音するときに、クセの出やすい要素を自覚し、気を付けて発音できるようになる
この3ステップは、すべてのレベルの方の発音矯正で同じです。
まずは発音診断のできる第三者に「どこにクセがあるのか」「規範的でない要素はどれか」をリストアップしてもらうのがスタートです。
そして特に上級者の方が気を付けるべきポイントとしては、
・これまでに何十回も何百回もその音を発音してきたから、その癖から抜けるのが大変
・考えるより先に中国語が口から出るから、発音した後に「あ、またやっちゃった」と思う
っていうことがあります。
ペラペラ話せる人であればあるほど、心を鬼にして、思考のリソースのうち発音に割く割合を大きくしていくことが求められます。
緩急抑揚が苦手なタイプの発音矯正トレーニング
ここで言う「緩急抑揚が苦手」というのは、一つ一つの子音や母音、声調はきれいに発音することができるのに、ナチュラルな中国語らしさが出ないタイプの人のことです。
よく「発音がいいですね」とほめられる。なのに、例えば、
・なんとなく会話が弾まない
・「ちょっと不自然ですね」と言われる
・「中国人とたくさん話すといいですよ」とアドバイスされる
といった経験をしている方です。
先日は、
「自分で自分の録音を聞いても、そっけない発音だなあと思う」
「感情を込めているつもりでも、感情がこもっているように聞こえない」
という悩みを聞かせてくださった方がいました。
こうした方は往々にして、かなり短期間で検定の級を取得されていたり、特定の分野の話題にとてもお詳しかったりと、可能性にあふれているにもかかわらず、ご本人の知的ポテンシャルが聞き手に伝わらない、という傾向があります。
このタイプの人が「発音をよくしたい」「自然な中国語にしたい」と思ったら、どうやって発音矯正をしたらいいか。
それには、次の過程でブラッシュアップしていきましょう。
1.1字ごとの音を最初から最後までていねいに発音する
(高低の変化や1字の長さを途中まででやめるということをしない)
(早口でしゃべっても、同じ割合のままで早くする)
2.1つの単語をまとまりとして発音する
(字と字の間で声を続けて発音する)
(※2文字目が特定の母音で始まる時は、どうしても少し途切れることはあります)
3.連語(フレーズ、句)の数文字をまとまりとして発音する
(つまり、動詞+補語、修飾語+中心語、助動詞+動詞、副詞+形容詞など)
4.句読点までの文を続けて発音する
(その時、2.や、3.のまとまりはまとまりとしてキープする)
この過程で、文脈や話の内容に応じて、どこを目立たせたいか考えて、そこを目立たせることができたら、もう聞き手がストレスなく耳を傾けてくれる「聞き取りやすい中国語」の完成です。
まとめ 上級者なのにもったいない発音の悩みはこうして解決しよう
タイプ1:特定の発音要素が苦手なタイプ
・どの発音が間違っているのか特定する
・間違った時に自分で気づけるようにする
・発音する前から気をつけて発音できるようにする
タイプ2:緩急抑揚が苦手なタイプ
・一字一字の発音をていねいにする
・意味のまとまりは声をつなげて発音する
・その上で目立たせる部分を目立たせる
「もっと発音をよくしたい」と思う気持ちは誰も否定できません。
まずは、自分が持っている違和感の正体を見極めましょう。
克服すべき課題がなんなのか分かりさえすれば、あとは解決に向けてトレーニングをするだけです。
大丈夫。道は必ずひらけます。