1. 翻訳家めざして

読書メモ:原文の構造を離れてもイメージを同等に写す訳

『翻訳通信』第30号 2004年11月号
「名訳 池央耿訳『南仏プロヴァンスの12か月』」(須藤朱美)より

「 池氏の訳文では、この美しい英語の言い回しが、じつに日本的な奥ゆかしさと笑いをもって訳されています。『ポケットの奥深くに隠し持った財布に手を付けずに済む』という表現には生々しい金銭を表す言葉を用いず、『財布』という間接的イメージで表現しています。さらに『隠し持った』、『手を付けず』という言葉のニュアンスで、プロヴァンスの人々の生活を温かい眼差しでほんのり茶化しています。表面的には原文の構造をまったく無視していながら、結果として読者に原文と同等のイメージを思い起こさせる訳文です。それでいて言葉自体の音と見目がこのうえなく美しいのです。」

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