1. -りんずの講師ってこんな人-

構音障害の内気女子が中国語キャスターになるまで(4)

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日本語の自己流発音矯正が20代である程度成功した、私のストーリーの続きです。
今回は37歳からの第二次発音矯正の話です。中国語キャスターになったのは35歳のことなので少し寄り道になりますが、子供時代からの長い旅が、ひとまずの決着をみます。

まだクセがある。もっと極めたい……

自主的な発音矯正がかなり成功した私ですが、まだ、ふとしたときにクセが出ていました。
私の実家は「滝沢(たきざわ)ニュータウン」というところでした。タクシーで行き先を告げたときに「はい?」と聞き返されるのは悔しいものです。「たきざわ」の「き」が明瞭に言えてなかったのでしょう。現地ではそんなにマイナーな地名でもないんだから、推察してくれたっていいのに……。

発音矯正を意識しているとはいっても、住所というのは子供の頃から何百回となく繰り返してきた発音だけに、口の動きのクセも頑固に固定していたのでしょうね。

親しい友人にこの悩みを話したら、
「あー、そういえば、口がゆがんでるなーと思うことはあったけど、そういうワケだったのか」
というコメントをもらいました。
あら、そう?と鏡を見てみると、たしかにイの段でクセが出たときには、唇が片側にだけ大きく引っぱられていることが分かりました。
私も乙女ですから、外見にも影響が出ていると知って、これは捨て置けない!と思いましたとも。

名前が分かったら解決した:構音障害の発見

長男が1歳数ヶ月のころ、ふと新聞の健康記事が目に留まりました。

〈体とこころの通信簿〉
こどもの発音 ――年齢みて訓練、病気の場合も
(朝日新聞2010年3月29日夕刊be)

うちの赤ちゃんに役立つことは書いてあるかなー、と読んでいったところ、こんなことが書いてあるではありませんか。

舌や口の動きに癖があり、発音が正常化しないこともある。側音化構音と言われる症状が代表的で、「イ」の音を出す時に口を曲げるようにしてしまい、息が抜けて聞き取りにくい音になる。このような症状も練習次第で克服可能という。

私がずーっと悩んできた「あれ」に、
名前がついていたなんて!

この記事で「側音化構音」という用語を初めて知り、猛然と情報収集を始めました。
すると、側音化構音をはじめとする「構音障害」のリハビリテーションをする「言語聴覚士」という医療資格があることが分かりました。

中国語を最初に教えてくださった名物先生は、私の側音化構音を見抜いてくださらなかったけれど、それは仕方のないこと。
音声学の専門家であっても、医療としての構音の知識を持っていないということはあり得ることで、責められることではありません。

関連情報を調べていくと、芋づる式に詳しい情報も得られ、そのおかげで自己流発音矯正も次のステージに進むことができました。
例えば、「さ、す、せ、そ」と「し」の調音部位が違うこと。それまで「し」の音を出すために「すぃ」から寄せていったのですが、新たに得た知識で「しゃ、しゅ、しぇ、しょ」から寄せていったら、満足できる発音が出せるようになったのです。

ネットや専門書の膨大な情報にアクセスできるようになったのは、「構音」というキーワードを知ったからでした。
キーワード! キーワードって、なんて素晴らしいんでしょう!
名前が分かったら解決したー、と、しばし感慨にふけったものです。

それからほぼ10年。
今では「ぎっしり」も「ばっちり」も『魔女の宅急便』の「キキとジジ」も怖くありません。

子供たちを寝かしつける前に絵本の読み聞かせをしています。
読み聞かせでは、何度も何度も同じ絵本を読んで中身がアタマに入っています。おかげで発音に意識を向けて音読するゆとりがあるので、読み聞かせが構音トレーニングの時間にもなっています。
「イ段」の音は今でも、かつての調音点がひょっこり顔を出してくることがありますので、いつもどこか脳の一部分で気にしています。読み聞かせでは、トレーニングだと意識していることもあって、大体においてばっちりの発音ができるので、ハッピーな気持ちになります。
考えてみれば毎晩「成功体験」を味わっているわけで、私の人生にハッピーなおまけがついてきたようなもの。

あれだけ苦しんでいた悩みが、いくつかのきっかけで劇的なまでに解消された経験は、学習やトレーニングにはキモがある、っていうことを気づかせてくれました。


次回からは中国語キャスターのオーディションの話です。

(つづく)

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