Yさん:最近、通訳学校の先生からのダメだしが減ってきたんです♪
りんず:それはよかったですね。がんばって勉強されている努力が実りましたね。
Yさん:はい! 以前なら、まず最初に発音のことを言われることが多かったのに、そうではなくなってきたんです! でも……
りんず:……ん? どうしました?
Yさんはすでに中国語を使った業務や通訳案件の依頼も受けておられて、実務レベルではかなりの中国語の使い手です。でも、通訳学校の先生から発音についての指摘がなくならない、と悩んで受講されています。
発音矯正の努力の甲斐あって、最近ではとても安定した発音のYさん。通訳学校の夏の面談で、とくに発音についてのコメントがなかったので、「……中国語の発音のほうは、最近どうでしょう?」と尋ねてみたそうです。すると……
通訳学校の先生:数年前よりはたしかによくなった。とはいえ、日本人通訳者のなかで上手なほうかというとそうではない。
……というコメントをくださったそうです。
Yさんの自己分析では、訳出に気を取られると発音がおろそかになってしまうようだ、とのこと。
りんず:そうなのですね。では、普段の音読練習で、口の筋肉の強化トレーニングを挟みましょう。
Yさん:というと?
りんず:まずは、自然なスピードで読む前に、一音節一音節をひとつひとつ丁寧に読み上げます。緩急も抑揚も気にせず、正確な口の動きを省略しないこと、正確な声調を出すことに集中してください。
Yさん:それをすると、どうなりますか?
りんず:それをすると、話すスピードが速くなった時に、ついつい口の動きが省略されてしまうことを予防し、「この発音はいつもこの動き」という口と脳の連動が強化されます。
Yさん:なるほど! やってみます。
りんず:それと!
Yさん:はい?
りんず:Yさんは、もうかなり発音がいいので、より一層「うまいね」と言わせるには、もう一つコツがあります。
Yさん:ええ~っ、なんですか、それ? 教えてください!
りんず:それは、有気音で、気流音だけが聞こえる時間を今よりももっと長くすることです。
Yさん:わたし、有気音が出ていませんか?
りんず:いいえ、無気音と有気音の区別はしっかりできていらっしゃいます。いまのYさんと同じような発音のネイティブの人もいます。でも、ネイティブのナレーターやアナウンサー、俳優、中国語講師など、ことばを生業にしている人は、気流音をとてもきれいに聞かせるんです。
Yさん:気流音ですか……。
りんず:そう。母音が出てくる前に、空気の音だけが聞こえるあの時間帯です。そして、ネイティブの有気音は、決して「強く」「激しく」発音しなくてもちゃんと有気音だと分かります。小さい声でも、ささやき声でも、あの空気の音が聞こえると、とても明晰なイメージの中国語になるんですよ。
Yさん:そうなんですね! 今日の練習から気を付けてみます!
Yさんの有気音の特訓、どんな成果を上げるでしょうか。通訳学校の次の面談が楽しみです。