Mさん:
先生、お手本の音声を送ってくださって、ありがとうございました。
普段の井田先生と全く違う雰囲気でビックリしました。
自分の発音との違いに愕然としましたが、私もこんな風に発音したいです!
りんず:
お褒めいただきありがとうございます^^
Mさん:
日本語は口の中だけ使っている感じですが、中国語の方は全体的に鼻の中に響かせてから出しているように聞こえました。
そんな風にすると中国語っぽくなりますか?
Mさんは華奢なお身体で、とても優しいお声で話をされる方です。
自分の話し方が中国語に向いていないのではないか、と気にしていらっしゃいました。
わたしが講師音声としてお送りした中国語の録音が、日本語を話すときの発声と違っていることに驚いたMさん。
ひょっとして鼻に響かせたら中国語っぽくなるのかな? とお考えになりました。
たしかに鼻にかかっているような声で話す中国人もいらっしゃいますが、Mさんのように、やさしく細い声で話す習慣の中国人もいます。
このような、声の出し方、話し方というのは、「発音がきれいかどうか」という判定にかかわるポイントではなく、どのような立場の人がどのような場面で話しているのか、または話すつもりなのか、というTPOの選択にかかわるポイントだろうと思います。
わたしが模範音声を録音してお渡しする時は、できるだけ発音教本のCDのような発声を目指しています。
アナウンサーが本番で出しているような声に似ていると思います。
いくらわたしが自信を持って発音講師をしているとはいっても、そこはやはり非ネイティブなので、カジュアルな発声のままでは本物らしくならないのです。
で、そんな時にどこをどう工夫しているかというと、
-
- 腹式呼吸で胸郭を広げる
- 発声では「あくび」をするときのようにノドを開く
- 胸にも顔にも音が響くようにする
といったところです。
大きな部屋いっぱいに聞かせたいときはこんな発声になるかと思います。
日本語は口の中をあまり大きく開けない言語だ、ということはよく言われます。
確かにそうかもしれません。
大体の方がリラックスして母語の日本語を話す時は、
奥歯より前側の、前歯から数えて5番目の歯から前方の空間くらいで、
というのはまあ大体ですけれど、大体それくらいの空間で響かせていると思います。
Mさんも、わたしもそうです。
ただ、
中国語ネイティブの方にも、リラックスして中国語を話すときにMさんと同じような発声で話す、「中国人っぽくない」中国人がいます。
この動画に出ている女性はイエイエさんとおっしゃり、以前『中国語ジャーナル』のCD音声を担当されていました。
中国語教材音声の収録でご一緒したことがありますが、その時は、張りのある「教室向きの声」といったらいいんでしょうかね、そんな発声をされていましたが、普段の話し方は、この動画の通り中国語でも優しい発声でした。
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イエイエさんは2013年に家族と一緒に中国に帰ってしまいましたが、家族ぐるみで動物園に遊びに行ったりしたことがあるんですよ~。いまごろ元気にしてるかなあ?
一方、こちらの動画の方の話し方は、外国人がイメージする、「いわゆる中国語っぽい」発声だと思います。
https://twitter.com/i/status/1276761588985401344
官琳さん(@kannrin)のtweetより
中国传媒大学の2020年卒業生スピーチだそうです。
もう、なんか、まるっきりニュース放送みたいな話し方ですよね。情報によると日本国籍の方らしいですが、ご両親は中国人なのだとか。
twitterでは
標準語が完璧なだけじゃなくてアナウンサーっぽい話し方(播音腔)なのが中国人的にも面白いです。
といった反応も。「播音腔」っていう言葉があるんですねー。
さすが中国アナウンサーの登竜門といわれる伝媒大学の卒業生!標準語が完璧なだけじゃなくてアナウンサーっぽい話し方(播音腔)なのが中国人的にも面白いです。てっきりアナウンス学科と思いきや、人文学院だそうです。
— 優チャンチャン@中国語ナレーター (@chanchan_you) June 28, 2020
この方のこのスピーチは、フォーマルな場で卒業生代表として話すのですから、自然と話し方も発声も「よそいき」の装いになっていたことでしょう。
普段のリラックスしたときの話し方はどんな風なんでしょうね。
りんず:
というわけで、どんなTPOでどんな人物像になりきるか、キャラクター設定をどこにおくかで、目指す「話し方」は変わりますね。
Mさん:
そういうものなんですね!
優しい話し方でもいいということが分かって、少し安心しました!
でももう少しアナウンサーみたいな発音に近づけたいと思ったら、どうしたらいいですか?
りんず:
それはですね、口の中に広いコンサートホールを作ってあげることです。
口の中の天井と床との間を長くして、舌の上に大きな共鳴空間を作ってあげるんです。
慣れないうちは、上あごと下あごの距離を離すことでサポートしてもいいですよ。
Mさん:
天井の高いホールを、口の中に作るんですね。やってみます!