「日本人の英語の発音はおかしい。日本人は外国語に向いてない。中国語の発音ができないのも当然」
なんて言われたら、どう思いますか?
これ、中国人から実際に言われました。
まず「日本人の英語の発音はおかしい」って言い始めたから、けっこう仲良しの友人だったので「そんなわけない!」って反論しましたよ。
〔日〕「そりゃ私は英語が上手くないけれども、英語が上手な日本人なんていくらでもいるよ。あの人も、あの人も」
〔中〕「いやー、でも日本人の英語の発音って、なんかおかしい」
〔日〕「おかしいって言うけど、あなたが言ってるのは日本語の中の外来語のことじゃないの?こっちは英語だと思って話してるんじゃなくて、日本語としてカタカナ語を話してるのよ」
〔中〕「じゃあ英語でcommunicationって言ってみて」
〔日〕「え…、communication…?」
〔中〕「ほら、なんか違う。communicationでしょ」
〔日〕(あなたのだって中国語なまりだけどね)
〔日〕「たしかに日本の学校教育は音読や会話が軽視されてきたから、音読をいっぱいして暗唱する中国人にはかなわないかもね」(とちょっと引いておく)
そしたら「日本人は外国語に向いてない」って言い始めるじゃないですか。
〔中〕「日本語って母音が5個しかなくて、五十音表も48文字しかないでしょ? だから外国語に向いてないのよ」
〔日〕(きゃ・きゅ・きょとかもあるんだけど…)
〔日〕「だからって、ちゃんと習えば外国語をマスターすることだってでき…」
〔中〕「だって中国語の発音もちゃんとできる人見たことないもの。あなた以外ではね。あなたは本当に上手。他には見たことないわよ」
〔日〕(いや、そんなことはなくて、私より中国語が上手な日本人なんてどんどん育ってきてるのに…)
埒があかないし、なんか褒められちゃったから、この話題はこれでおしまいにした。それにしても、なかなか頑固だった。
けっこう柔軟で、来日18年で日本文化のこともよく分かっていて、幼稚園のママ友たちとも和やかにやっている彼女がそう言うから、びっくりしたものです。
この彼女の思い込みを、たまに思い出すんです。
ひょっとして中国語ネイティブの中には、「中国語の発音は難しい。外国人がマスターできるはずがない」って思い込んでいる人がいるんじゃないかな、って。
「ネイティブの先生に発音を習っても、適当なところで妥協されてしまうんです」という話とか、「あなたの発音で十分通じますから発音レッスンなんて必要ありません、と言われました」「現地でも特に発音を直してもらったことはありませんでした」という話を耳にすることがあります。
それは、うまく解説ができないとか、求める発音のレベルが高くないとか、そういうことだと思ってきたんですが、ひょっとして。
もしも、ですが。
万一、教える側の先生が「外国人が中国語の発音をマスターできるはずがない」っていう思い込みを持っていたとしたら。
そしたら、生徒の可能性を信じて伸ばしてあげることはありませんよね。
そんなことはないと信じたいし、ネイティブの先生にも対外漢語教学をきちんと学んだ方や、中国語音声学に造詣の深い方もいらっしゃるから、大丈夫だとは思うのですが。
せめて私は、受講生さんの可能性を信じて、日本人講師なりに伝えるべきことを伝えていきたいと思っています。