この間、うっかり財布を忘れてしまったので、一緒にいた人に食事代をおごらせてしまいました。
「おごる」は“请客 qing3ke4”で、
“今天我请客。jin1tian1 wo3 qing3ke4.”=「今日は僕がおごるよ」
というのは初級の教科書で出てくる言い方。
でも財布を忘れた私に替わって支払いをしてくれた連れは「よろこんで」「主体的に」おごってくれたわけではなくて、若干「しぶしぶ」顔で払ってくれました(お世話になりました!)。私は財布がないのをいいことに、相手の懐をあてにして、要するにたかってしまったわけですね。
中国語で「たかる」に近い言葉は“蹭 ceng4”だと思います。
辞書を引くと、方言として「ただで利益を得る。ありつく。」とあります。
商社東京駐在員のチョウさんに教えてもらった使用例はこんなもの。
“蹭饭” “蹭酒” “蹭烟” “蹭玩儿”
「たかる」はちょっと卑しい感じがしますが、チョウさんによれば“蹭”は一概に“贬义词”だというわけではないそうです。ひとさまの金銭で何かを享受する行為自体を表す“中性词”なのでしょうかね。
日本語では
「いつもおごってもらって、悪いわね」
と言うより
「いつもたかっちゃって、悪いわね」
と言えば、すまなさ、自己卑下の気持ちがより強く表されます。ついでに、ちょっとにやりとする笑いのニュアンスが会話にもたらされます。
中国の雑誌記者ウさんによれば、“蹭”も、自分自身の行為について言うときには、“贬义”とまではいかなくても謙譲気味な意味、自嘲気味な意味、時にはにやり笑いのニュアンスが、やはり出るようです。
“不好意思啊,我总蹭你的烟。”=「悪いなあ、いつもタバコもらっちゃって」
「たかる」の語源って、ハエがたかるの「たかる」ですかね。
“蹭”は単体では「こする。汚す。」という意味。ズボンの裾にこすれてへばりついた泥はなかなか落ちないことから、「他人の出費で楽しむ行為」という意味が派生してきたのではないか、というのが中国の雑誌記者リンさんの意見。
どうでしょう?「たかる」と“蹭”、無関係な単語なのに、なんか性格が似てますよね!