数日間布団に入っていて仕事が手につかなかったので、普段読めない趣味の本が読めました。
有川浩さんの『旅猫リポート』。
……忘れてた。彼女の小説は、よく泣かされるんでした。今回もご多分に漏れず。
ところで、彼女の小説では一作に一回くらい「いいだけ」っていう言葉に出会います。
「いいだけ」は、中国人の友人から質問されたことがあって、ピッとアンテナが立つんです。
その友人は日本語の小説を中国語に翻訳しているFさん。上海出身の才女です。中国事情で分からないことがあると教えてくれます。
珍しく彼女から来た日本語の質問が、日本の小説に出てきた
「言葉を選ぶ余裕もなくいいだけ下世話になった台詞に、」
の「いいだけ」とはどういう意味か、と。
彼女は日本語はかなりの上級者ですが、それどころじゃなくて日本人の私も、これは分かりませんでした。
ネットで検索すると、知っている人と知らない人に二分されるようなので、方言かもしれません。
北海道の方言だという説と、限られた年代の人が使うという説があるようです。
用例:いいだけ飲んどいて、金払わねぇのかよ!
この場合は、「飲むだけ飲んでおいて、お金は払わないのか」という意味で、「やるだけやって~うんぬん」っていうのを「いいだけやって」って言うのだそうです。
用例:昨日の合コン、いいだけ盛り上がったのに、誰からも連絡先を聞かれなかった!
用例:この間の居酒屋、いいだけ飲んで、食べて、3000円ポッキリなんて、安かったぜ~
この二つの場合は、好きなだけ、とか思う存分、という意味だと思います。
「いいだけ+動詞」の組み合わせで使うみたいです。
ですからFさんの質問の小説の「いいだけ下世話になった台詞(を吐いた)」は、
「いいだけ下世話になった」が言いたいか、
「いいだけ吐いた」が言いたいか、
のどちらか。
前者なら、「ずいぶん手垢がついた」「そうとう使い古された」「陳腐な」言葉を使った、もしくは「下世話にもほどがある」「俗っぽすぎて品がない」言葉を使ったという意味で、
後者なら、下世話なセリフを「たくさん、言いたいだけ言った」という意味になります。この場合なら「言いたい放題」もあてはまります。
質問の小説の場合は、前後の文脈から考えて、たぶん前者だと思う、という私の感覚も添えてお返事しました。
ここまで書いて、Fさんが翻訳したあの作品は?と思って調べたら、
……なんと!それは有川浩作品でした!
やっぱりか!
有川浩さんの作品で私が覚えた言葉はもう一つあって、それは「えずく」。
気持ちが悪くて吐き気がするんだけど、嘔吐はしない、ような時に、うえっ、ってなるあれ。
私はつわりの時の母親学級などでも聞いた記憶がないんだけれど、有川作品でたまに出てきます。
ちょうど先週末の体調不良は、吐かない、下さない、でもえずく、っていう症状だったので、ぴったり。お医者さんでもそう表現したけど、そういえば一般的には通じるのかしら?
~私の大好きな有川作品(の一部)~