発音練習が進んでくると、1文字ごとの発音ではなくて文全体の自然さにも気を配る段階がやってきます。
上級者さんで「上手いね、とは言われるのだけれど、ネイティブの発音とは何か違う気がする」という方は、この段階で発音レッスンの門を叩いてくださる方もいます。
ピンインが間違いなく読めて、文字数が多くなって単語から文になっても発音が狂わない、そういう段階になると、緩急抑揚のつけかたを学ぶ段階です。
緩急・抑揚をつける目的
聞き手が原稿のない状態で音声を聞いているとき、何を頼りに聞いているかというと、1文字1文字の発音ではありません。
ある程度の文字数で感じ取れる、「意味のまとまり」「意味の切れ目」を聞いています。
そうしたまとまりや切れ目が表現されていると、文字がなくても単語やフレーズの意味を受け取ることができます。
逆に言えば、まとまりや切れ目がないと、いくら1文字ごとの発音が正確でも、聞き手が意味を考えるためにストレスがかかります。
その、意味のまとまりや意味の切れ目を表現するために、緩急抑揚が大きな助けになるわけです。
切れ目はどこにあるのか
意味のまとまり、意味の切れ目を表現するには、 文法上の構造の区切りが利用できます。
たとえば、述語動詞があって、それに続く目的語がすごく長いとか。
長い大会名をいくつかのパーツに分けるとか(例:出口商品大阪交易会开幕仪式)。
時間・時期を表す言葉と、文の主題とか。
こんなところがくぎられるんだな、という感覚を養うには、区切りにスラッシュ記号「/」を入れてあるテキストが便利です。
緩急抑揚のつけかた
緩急抑揚の表現方法は、まずは「目立たせたい語」を目立たせることから始めると良いでしょう。
(1)目立たせたい語の前後でややポーズを入れる(前後の語とすこし離す)
(2)目立たせたい語の部分をゆっくり発音する
(3)目立たせたい語の声調の高低差を幅広くする
(2)が、緩急の「緩」になり、(3)が、抑揚の「揚」になります。
その文の中で特に重要ではない情報は、丁寧に聞かせずサラッと流して発音しても構いません。音の粒が聞こえればいいという程度です。
そういう箇所が、緩急の「急」になり、抑揚の「抑」になります。
ほかに、文末に向かってなだらかに落ち着いていく、という流れもあります。
一文の中に、とくに最初の方に盛り上がりがあり、それから山なりにだんだんおさまっていき、文末に穏やかに落ち着いて終わる、という流れです。
これはだんだん息が続かなくなっていくという生理的な減衰から生まれたものだと思いますが、このように終われば一文が終わり、という合図にもなります。
上がり調子で勢いのあるまま終わると、まだ次に文が続くだろう、という予想を聞き手に抱かせます。
そんなところに気を配って発音し、かつ、1文字1文字の発音が乱れない、そうなればあなたは、かなり自然な中国語文を話せるようになっているはずです。