1. 中国語の発音の世界

発音のデッサン

silhouette

発音指導をしているとき、わたしはよく
「今はデッサンの段階ですから」
なんてことを言います。

実際の言語活動では、シチュエーションや、感情や、話の脈絡など、いろいろな要素によって抑揚がつきます。
だから同じ第1声とはいっても、さっきと今とではまったく違う高さで発音される、ということはしょっちゅうです。

ただし、基礎の発音学習や発音矯正では、そのような生き生きとしたプロソディを取り入れることは効果的ではありません。
まずは
「その言語において、この音はこの発音だと認識される範囲」
の核を把握するため、基準となる音色、音高、高低パターンを知り、規範的だとされる発音ができるようにならなくてはなりません。

たとえば:
「sheng」をネイティブ話者に発音してもらうと、「シェン」に聞こえる音から「ション」に聞こえる音まで人それぞれ。
でも、そのどちらも、ネイティブの話し手が「sheng」と言い、聞き手が「sheng」と聞き取り、双方が「sheng」だと認識する範囲には入っているのです。
でもその範囲は、日本語として「シェン」と聞こえる範囲、日本語で「ション」と聞こえる範囲と完全には重ならない。
この一線を越えたら中国語の「sheng」ではなくなるという限界の、内側(しかも中央寄りが望ましい)が規範的な発音の範囲です。

そういう規範的な発音の範囲は、声調にも子音にも母音にもあります。

耳が先に適応する人もいますし、自分自身で発音できてから耳が追いついてくる人もいます。
いずれにしても規範的な発音をモデルと同じように再現できることを目的とする段階、それをデッサンの段階と表現しています。

そういうわけで、りんず中国語ラボの発音矯正では、自分の発音を録音する→お手本音声と比較する→修正点を見つけて再度録音するの手順をしつこいくらい繰り返してもらっています。

上記は発音矯正の話ですが、デッサンは外国語学習にも有用のようで、岡本悠馬先生のブログにこういう記事があります。
“――外国語が上手くなりたいのであれば、やはり「デッサン」の訓練が必要です。”

ディクテーション(書き取り)は外国語のデッサンだ [南天中国語研究所]

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