演じるパーソナリティの違いによる発音聞き比べ!
中国語の発音のうち有気音が苦手ですー、という声をよく聞きます。
有気音というのは子音の分類の一つなのですが、ネイティブ話者の発音をよく観察していると、有気子音で始まる音節の母音の部分にも気流音をかぶせる話し方が聞こえてきます。
今回は、詩人海子による詩《面朝大海,春暖花开》を「女性性の強い女性」「男性性の強い男性」「中性的な女性」の三人による朗読で聞き比べてみます。
有気音の子音で始まる音節が、どんなふうに発音されているか、耳を澄ませて観察してみてくださいね。
目次
女性性の強い女性
男性性の強い男性
中性的な女性
有気音と無気音の発音方法をめぐる関連記事
女性性の強い女性
吐息まじりの、とまでは言わないけれど、有気音や摩擦音の気流音が母音にも乗っているのがよく伝わってくる例です。
ちなみに動画開始後50秒までは演技が入っていて、なかなか朗読は始まりません^^;
とてもきれいで素敵ではあるのですが、あまりに気流音が過剰だと、色っぽさのようなものが感じられてしまうなあとも思います。
こういう読み方は女声の朗読に多いんです。おそらくこれは文化的なジェンダー表現だろうと思います。
男声だと息より声を響かせるのが多いのです。
男性性の強い男性
こちらはとてもよいお声の男性。文芸作品の模範朗読に採用されそうな朗読です。
有気音や摩擦音の気流音はしっかり聞こえてくるのですが、男性のプロの場合はこの方のように母音(元音)を口腔の奥から胸にかけて共鳴させるような発声をなさることが多いようです。
これも、男性の朗読はこういうものだ、という一種のジェンダー表現なのではないかと思います。
中性的な女性
上記お二人の朗読は、中国語圏では「とてもいい朗読」と判断される仕上がりです。
わたしは大袈裟な感じがしてこういうのは真似したくないんですが、
やろうと思ってもできないというのも正直なところです。
ですが次にご紹介するのは、淡々としたスタイルの朗読です。
こちらは、オーディション番組《超级女声》をきっかけに大ブレイクした歌手、李宇春さんです。
ボーイッシュな見た目と声が魅力的です。
彼女のこの朗読が発表されたのは、2020年4月。covid-19が猖獗をきわめた武漢のロックダウンが解除された、という時期のことです。戦いに荒れていわば精神的な焦土となった街の再起を願う意味で発表された朗読です。
その背景もあり、また、彼女の中性的なタレントもあいまって、淡々とした、それでいて静かに心を打つような作品になっています。
はじめに李宇春さんのあいさつがあり、詩の朗読が始まるのは1’27からです。
有気音の発音はどうかというと、しっかり聞こえていますが、けっして「激しく」「つよく」するのではないということがわかります。ささやき声にも似た落ち着いた朗読でも、クリアに聞こえます。
そして、女性性とか男性性という「ジェンダーくささ」のようなものは、感じられませんね。朗々とした「いわゆる朗読風」の朗読に比べて、この李宇春スタイルの朗読だったら、非ネイティブ学習者の私たちにも手が届きそうです。
なお、この詩をメロディのある歌として歌ってくれた映像もあります。すてきですよ。
有気音を発音するコツについては、こちらの記事をどうぞ。
「【りんず知恵袋】有気音でティッシュが吹けません」
無気音を発音するコツについてはこちらの記事をどうぞ。
「蚊なのか蛾なのか:無気音と濁音のはなし」